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武田 勝弘

相続登記は自分で出来る?3

 司法書士に頼まず、自分で相続登記をしたい。そんな事は可能なのでしょうか?

 愛媛県松山市の司法書士が自分で相続登記を出来るのかを解説します。今回はその3回目。


自分で相続登記をする


【自分で相続登記をするメリット】


 自分で相続登記をする最大のメリットは、費用がかからない事です。

 ただし、実費は必要ですので注意が必要です。実費とは、法務局で支払う登録免許税や市役所に支払う戸籍謄本代などです。

 費用が不要になるのは、あくまで司法書士報酬だけです。


【自分で相続登記するデメリット】


①窓口は全て平日。

 相続登記に必須の戸籍謄本などの書面は市役所などで取得します。当然、平日に市役所に出向いて取得する必要があります。

 書類を準備した後、法務局で登記手続きの相談をするのも平日です。その後、相続登記の申請書類を提出するのも平日です。補正と言って、申請書類に不備があった場合、訂正するのも平日です。登記後、提出していた書類を原本還付してもらうのも平日です。

 もちろん、戸籍謄本の取得・登記申請・原本還付は郵送でも可能です。しかしながら、直接、法務局の職員さんと対面で手続きするのも難しいのに、郵送となると、さらにハードルが上がります。


②時間がかかる。

 相続登記の申請をする前に法務局では、登記申請の相談をする事が出来ます。これに何回か通って、申請書類を準備します。しかしながら、この相談は事前予約制ですので好きな時間に行くと言う事は出来ません。毎回、予約をする事になります。

 そして、相談に何回か通って登記申請をする事になります。しかし初めて登記申請をした方が一度ですんなりと登記手続きが完了する事はまれで、何回か補正を繰り返す事になります。

 ですので、平日に何回も時間を取られる事になります。


③登記漏れ

 一般的に相続登記をする時は、亡くなった方の不動産全てを一度に相続登記します。しかしながら、自分たちで相続登記した場合は、不動産が漏れている事があります。

 例えば、不動産は自宅の土地・建物だけだと思っていたら、前面道路が私道でその持分を持っていた。例えば、土地の端が隅切りされていて、不動産が複数に別れていた。などです。

 こう言った登記漏れがあった場合は、再度、必要書類を集め直して相続登記をする必要があります。前回と同じような手間ひまがかかるのです。そして、前回の登記から数年たつと相続人の中に亡くなっている人が出てきます。そうすると手続きは、さらに困難になります。


④手続き相談と法律相談の違い。

 法務局の事前相談で出来るのは『手続き相談』です。司法書士が出来るのは『法律相談』です。違いがわかりづらいとは思いますが、個人的にはこれが最大のデメリットだと思います。

 法務局が出来るのは手続きについての案内だけです。相続人の名前はどこに書くのかなど、申請書の書き方などは教えてくれます。しかし、本当に不動産を相続する人がその人で良いのかなどは教えてくれません。

 例えば、司法書士が相続人全員で不動産を共有にしたいと相談を受けても、それはやめた方が良いと法的なアドバイスをします。後々、相続人同士でもめる原因になったり余計な費用が発生する事があるからです。

 しかしながら、手続き上問題なければ、法務局では共有でも相続登記の申請を受付ます。申請書に不備がなく、必要な添付書類がそろっていれば登記申請は受け付けられます。なぜなら、『後々、相続人同士でもめる原因になるからやめた方が良い』などの法的アドバイスは、弁護士や司法書士などの有資格者でないと出来ないからです。なので、法務局の職員さんが心の中でやめた方が良いと思っていても、アドバイスする事が出来ないのです。


 『1つの不動産を兄弟で共有しているうちは良かった。しかし、次の孫の代になって、さらにその配偶者まで共有者として加わってきてしまった。もう収集が付かない。』『前面道路の相続登記が抜けていた。再度、戸籍謄本を集めて相続登記をしなければならない。』

 ほとんどの司法書士がこの様な相談を受けた事があります。多くの場合、その原因は『自分たちで相続登記をした』です。

 中には、『法務局ではそんな事を教えてくれなかった』とおっしゃる方もいらっしゃいます。しかし、法務局では手続き相談しか出来ません。教える事が出来ないのですから、どうしようもありません。

 

まとめ

 自分で相続登記をすると司法書士報酬は節約出来る。しかし、時間と手間がかかるデメリットがあり、また、大きなデメリットとして、数年経ってから大きな問題が発生してくる可能性がある。

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