家庭裁判所で手続きはしていないが、遺産分割協議で相続放棄をした。そんな話を聞いたことがある。でも、それって本当に相続放棄出来ているのでしょうか?愛媛県松山市の司法書士がわかりやすく解説します。
知り合いから『相続が発生したけれど、何も相続財産はいらないから相続放棄をした』と言う話を聞いた事がある。そんな人は多いと思います。しかし、これは本当に相続放棄なのでしょうか。
相続放棄をする為には必ず家庭裁判所に申立てる必要があります。この家庭裁判所で手続きをしていない。けれども『相続人同志の話し合い(遺産分割協議)』で『自分が全財産を受け取らない』と言った。一般の方は、これを相続放棄と言っている場合がよくあります。
家庭裁判所の手続きで全財産を相続しないとしても、相続人同士の話し合いで全財産を相続しないとしても同じではないか。そう思われるかもしれません。
しかし、法律的には全く違います。
例えば
①相続人は長男と次男の2人。
②亡くなった人には1,000万円の不動産があった。
③亡くなった人には銀行に1,000万円の借金があった。
こんな事例で説明していきます。
家庭裁判所で相続放棄の手続きをした場合は、③の借金を支払う必要はありません。
しかしながら、相続人同士で例えば『長男が②も③も相続する。次男は一切の財産を相続しない』と遺産分割協議をしたらどうなるでしょう。
民法に、『相続人同士の遺産分割協議は、債権者の承諾がない場合、債権者に主張出来ない』こんな決まりがあります。
先ほどの遺産分割協議『長男が②も③も相続する。次男は一切の財産を相続しない。』を例にすると、債権者である銀行が承諾しなかった場合どうなるのか。答えは『債権者(銀行)に主張出来ない』。つまり、銀行から次男に借金の支払いを求められた場合は、次男は銀行に返済する必要があります(ただし法定相続分。今回の場合は500万円)。
銀行は遺産分割協議を承認して、長男に1,000万円請求する。または、遺産分割協議を承認せず、長男と次男にそれぞれ500万円ずつ請求する。この二つのうちから好きな方を選ぶ事が出来ます。
もちろん、次男は銀行に500万円を払った後、長男に対して、かわりに払った500万円を請求する事は出来ます。しかし長男がお金を使い果たして持っていなかったらどうなるでしょう。事実上、泣き寝入りするしかありません。
家庭裁判所でしっかり相続放棄の手続きを取った場合と、相続人同士の話し合いで財産を全ていらないと言った場合。法律的な意味は全く異なります。自分がどちらを選択すべきかは、慎重に判断する必要があります。
まとめ
相続放棄は家庭裁判所は相続放棄の手続きをする必要がある。それ以外は相続放棄になっていない。
コメント