ペット信託
近所に住む私の子供はマンション住まいなので動物が飼えません。
終活中ですが自分が死んだ後、ペットの事が心配です。ペットに自分の財産を相続させる、遺産を残すことは出来ますか?
残念ながら現在の法律ではペットに遺産を残すことは出来ません。
しかしながら、ペットに相続させたいという願いの本当の意味は、自分の死後もペットに今と変わらぬ幸せな生活をおくって欲しいという願いだと思います。
その願いなら実現させることが可能です。
どういった方法ですか?
民事信託、一般的には家族信託とかペット信託と言われたりする方法です。
信託?
信託銀行などを使って投資をするのですか?
いいえ、信託銀行などがおこなっている投資信託は商事信託と呼ばれるもので民事信託とは全く異なります。
同じ信託という言葉が使われておりますのでわかりにくですが、民事信託と商事信託は全く別物です。
ペットへ相続させるための民事信託には投資の要素は全くありません。
くわしく教えてください。
まずは、ペットの平均余命から予想されるエサ代などペットが亡くなるまでにかかる費用を計算して信頼のおける方に預けます。
今回はマンション住まいのお子さんに預けることにします。
子供にたくさんのお金を渡すと贈与税がかかるんじゃないんですか?
いいえ、民事信託の場合は贈与税はかかりません。かわりに皆さんが亡くなった時に相続税はかかる可能性があります。
簡単に言うと民事信託をおこなっても、おこなわなくても税金は同じです。最終的にかかってくる税金が増えることはありません。逆に減ることもありませんので節税効果はありません。
くわしくは税理士にご確認ください。
まずは信頼のおける人間、今回の場合は子供にお金を預けるんですね。
あくまでも預かってるお金なので、お子さんはそのお金を自分のためには使えません。お子さんは預かったお金を管理し、ペットのためだけに使います。
預けたあとはどうなるんですか?
皆さんが生きている間と亡くなったあとで少し変わります。
まずは皆さんが生きている間はお子さんからエサ代等ペットの世話に必要なお金を預けたお金から出してもらって、今までと同様に皆さんがペットの世話をします。
ずっとペットを見守り、一緒にすごせるんですね。
私の死後はどうなるんですか?
皆さんの死後は生前に定めておいたペットのなついてるご近所の方や動物愛護団体に里親になってもらいペットの面倒をみてもらいます。
そしてその里親の方にお子さんより、預けたお金の中からエサ代や事前に定めておいた謝礼を支払ってもらいます。
自分の子供がお金を管理して、実際にその時ペットの面倒を見てくれる里親の方にエサ代等の費用を支払うんですね
はい、そういうことです。
でもそれだと民事信託など利用しなくても、私の死後、ペットの面倒を見てくれる里親の方にお金をまとめて渡すようにした方が良いのではないのですか??
皆さんが亡くなった時にペットの平均余命から計算した必要な費用を一度に渡してしまう方法を、遺贈や死因贈与契約といいます。
その方法も可能ですが2つの大きな問題があります。
どんな問題ですか?
1つめはモラルハザードと呼ばれる問題です。
一度に全部お金を渡してしまう方法だと、ペットが長生きしない方がペットに使うお金が減って、結果、世話をする里親の方に残るお金が増えます。そのため、あまり熱心にペットの面倒を見なかったり、わざと逃がしたりする方が世話をする里親の方にとっては得だと考えてしまう可能性があるのです。
それに対し、民事信託だとペットが長生きするほど謝礼をもらえる期間が伸びます。結果、熱心にペットの世話をした方が世話をしてくれる里親の方にとっても得だと考えるようになります。
2つめはどんな問題ですか?
2つめは皆さんが認知症になった場合です。
認知症になった場合、様々な重要な判断が出来なくなりますので、皆さんは成年後見人制度を利用することになります。
後見人は皆さんのためになること、プラスになることにお金を使う必要があります。皆さんが認知症でなければどう行動したであろう?という考え方とは少し違った判断をします。
例えばどういう判断ですか?
例えば、よくある事例では、おじいさんが認知症でなければ孫の大学入学祝いを渡したであろうと思われる場合であっても、おじいさんが認知症になってしまうと後見人は大学入学祝いを渡すことは出来ないと判断せざるを得ない場合があります。後見人はおじいさんのためにお金は使えますが、孫のためにお金は使えないのです。
ペットの場合はどういうことになるのでしょう?
ペットは法律上、物です。
皆さんのご家庭のテレビが壊れた時に修理代を払ってまで修理する価値があるかどうかを判断するのと同様に、ペットが病気になった時に多額の治療費を払ってまで病気を治すかどうかを判断することになります。
皆さんにとってペットは家族であり、皆さんが認知症になっていなければ治療費に関係なく治療すると考えられる場合でも、後見人はその立場上、ペットを物として多額の費用をかけてまでなおす価値があるかどうかで判断するしかありません。
ペットの民事信託の場合はどういう判断をするのですか?
民事信託の場合はペットが幸せに暮らしていけるかどうかを判断基準としますので、世話をしている里親の方やお金を管理しているお子さんが、病気の治療をした方がペットにとっては幸せだと判断した場合は治療することになります。
判断基準はあくまでペットにとって幸せかどうかですから、皆さんの願いに近い判断が出ることになります。
遺贈や死因贈与契約より民事信託の方が良いことばかりのように思えるのですが、何かデメリットはあるのですか?
民事信託最大のデメリットは遺贈や死因贈与契約と比べて費用が多くかかってしまうことです。
死後も確実にそれぞれの役割をおこなってもらうために、皆さんと世話をする里親の方、お金を預かって管理するお子さんの三者に公証役場に集まってもらって民事信託契約を公正証書にする必要があります。
そのため公証人に支払う費用が必要であり、また高度な法律的手続きが必要なため、当事務所の報酬も高くなってしまいます。
ペットにいくらくらい財産を残した方がいいのか、費用はどのくらいかかるのかを知りたいのですが?
お手続きの流れ
①お問い合わせフォームよりペットに財産を残したい旨をご連絡ください。
②お客様のご自宅・職場・その他お客様のご指定の場所で打ち合わせ。
③お客様にあったプランのご提案、およびお見積り。
④お金を管理される方、ペットの世話をされる里親の方との打ち合わせ。
⑤公証役場において公正証書の作成。民事信託の開始。
※当事務所ではお手続きの進み具合を、メールにてこまめにご連絡しております。
出来るだけお問い合わせフォームにメールアドレスをご入力ください。